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2017.06.23

<FiNCウェルネスサーベイ分析> エンゲージメントに関連する要因についての予備的分析 : 生活習慣などのフィジカル面に注目して

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<FiNCウェルネスサーベイ分析>
エンゲージメントに関連する要因についての予備的分析
: 生活習慣などのフィジカル面に注目して

 

村上 真*1/鈴木陽介*1/宮崎亜紀子*1/岩本 隆*2

*1株式会社FiNC、*2慶應義塾大学

 

Ⅰ. はじめに

就労者のウェルネスに関連する要因としてエンゲージメントへの注目が高まっている。エンゲージメントとは、従業員が、会社が実現しようとしている目標を理解し、「仕事から活力を得て、仕事に誇りを感じ、従業員がいきいきと仕事をしている状態」である1)。「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられ、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知」とされている2~4。わが国では、まず行政サイドにおいて、厚生労働省労働安全衛生総合研究事業で取り上げられ、健康いきいき職場づくりの達成目標の1つとされ、新職業性ストレス簡易調査票にも盛り込まれた1)。その後、エンゲージメントと経営指標との関連が報告されたことを受けて企業サイドでの関心が高まりつつある。先行研究は、エンゲージメントと、売上高、利益(率)、生産性、顧客満足度、品質、安全性、社員の離職率、社員の勤怠等の経営関連指標との相関を指摘している6~10

FiNCウェルネスサーベイは、フィジカル(身体面)、メンタル(精神面)、エンゲージメントの3側面からウェルネスを計測・可視化している。本研究は、エンゲージメントに関連する要因を主に生活習慣などのフィジカル面に注目して明らかにすることを目的とする。本研究は、対象者を限定した予備的な位置づけであり、本研究の成果を踏まえ対象者を追加した研究を今後実施する予定である。

 

Ⅱ. 研究方法

1. 研究対象者ならびに調査方法

FiNC for Businessを利用する4企業に所属し、データの研究利用に同意を得た従業員849名(男性477名:平均31.1±6.3歳・20.5~54.4歳、女性372名:平均28.9±5.5歳・20.0~54.8歳)を対象とし、FiNCウェルネスサーベイを用いてスマートフォンまたはPCを通じて自記式質問紙調査を実施した(調査期間:2016年11月から2017年2月まで)。FiNCウェルネスサーベイの内容は表1,2の通り。

図2

 

図3

2. 分析方法

まず、ウェルネススコア、フィジカルスコア、メンタルスコア、エンゲージメントスコアならびに個別項目間の関連を相関分析により検討した。次に、フィジカルスコア(生活習慣(食事・運動・睡眠)ほか)に関わる設問の選択肢について、選択した群・選択しなかった群に分割し、エンゲージメントスコアならびに同スコアを構成する個別質問の平均値の差異をt検定により検討した。統計解析にはSPSS ver.24 for Windowsを使用し、有意水準を5%未満とした。

 

Ⅲ. 結果および考察

1. ウェルネススコア

ウェルネススコアと、これを構成する3スコア(フィジカルスコア、メンタルスコア、エンゲージメントスコア)の平均、標準偏差、分布は図1~4に示す結果となった。

図統合

 

2.  エンゲージメントスコアと他のスコアとの関連

スコア間の関連を相関分析により検討したところ、エンゲージメントスコアは、フィジカルスコアと低位、メンタルスコアと中位の相関がみられた(表3)。フィジカル、メンタル、エンゲージメントの3要因は相互に関連しており、生活習慣を含むフィジカル面の改善によりエンゲージメントを強化できる可能性があることが示唆された。

 

表3:FWS4スコアの相関係数(対象者:849人)

図8

 

3. エンゲージメントスコア、同個別項目とフィジカルスコア個別項目との関連

フィジカルスコア個別項目では、運動習慣、カラダの状態、睡眠習慣、業務に影響している要因が、エンゲージメントスコアと低位の相関がみられた。食習慣、基礎体温は、選択肢によりエンゲージメントに影響を与える項目がみられた(次項参照)。エンゲージメントスコアを構成する5つの個別項目のなかでは、職務遂行能力に対して相関係数が有意となるフィジカルスコア個別項目が多数となった。フィジカル要因が、職務遂行能を通じてエンゲージメントに影響を与えていることが示唆された。

 

表4:エンゲージメントスコア、同個別項目とフィジカルスコアスコア個別項目との相関係数

図9 相関係数

 

4. エンゲージメントスコア、同個別項目とフィジカルスコア構成質問の選択肢との関連

フィジカルスコア構成質問は、選択肢のなかから該当するものをいくつでも選択する形式をとっている。各選択肢を、選択した/選択しなかった、により対象者を2群に分割し、エンゲージメントスコアと同スコアを構成する個別項目の平均値を比較したところ(t検定により検討、有意水準5%未満)、表5に示す選択肢に差がみられた。

 

表5:エンゲージメントスコア、同個別項目とフィジカルスコアスコア構成質問選択肢の選択有無との関係

図1

 

食事習慣、運動習慣、睡眠習慣に関する質問において良好な習慣を示す選択肢を選んだ対象者は、エンゲージメントスコア、同スコアを構成する個別項目の平均値が有意に高かった(悪い習慣を示す選択肢については逆であった)。また、「反り腰である」「猫背である」といった姿勢関連をはじめとして身体症状を持つ対象者は、持っていない対象者と比較してエンゲージメントスコア、同スコアを構成する個別項目の平均値が有意に低かった。エンゲージメントを支える要因として「リカバリー経験」がある。リカバリー経験とは「就業中のストレスフルな体験によって生起したストレス反応や、それらの体験によって消費された心理社会的資源を元の水準に回復させるための活動」である4。生活習慣や身体症状を改善することは、リカバリー経験を促進することを通じて、エンゲージメントを高める可能性があると思われる。

 

Ⅳ. まとめと今後の課題

就労者849人のFiNCウェルネスサーベイ回答結果の相関分析によれば、エンゲージメントが高いことは、生活習慣を含むフィジカル要因、メンタル要因が良好であることと関連していた。個別の生活習慣の良不良・身体症状の有無による比較は、生活習慣が良い就労者・身体症状が無い就労者のエンゲージメントが、そうでない就労者と比較して高かった。生活習慣が、職務遂行能力やリカバリー経験を通じてエンゲージメントに関連していると思われる。相関は低位にとどまるが、改善が比較的容易な生活習慣の改善を積み重ねることにより、エンゲージメントを強化できる可能性があると考えられる。

本研究は、研究対象者が4社849人にとどまり、就労者全般に対するエンゲージメントに関連する要因を検証したとは言いがたい。本研究を予備的研究とし、今後対象社数、対象者数を拡大し更なる検討を実施していく予定である。

 

 

文献

1) 川上憲人ほか:労働安全衛生総合研究事業・労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究・平成23年度総括・分担研究報告書. 厚生労働省, 東京, 2012

2) Schaufeli, W. B., & Bakker, A, B. Job demands, job resources and their relationship with burnout and engagement: A multi-sample study. Journal of Organizational Behavior, 25: 293-315, 2004

3) Schaufeli, W. B., Salanova, M., Gonzalez-Roma, et al., The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmative analytic approach. Journal of Happiness Studies, 3, pp71-92, 2002

4) 島津明人:ワーク・エンゲージメント. 労働調査会, 東京:28-29, 2014

5) アーノルド・B・バッカ―、マイケル・P・ライター編(島津明人総監訳、井上彰臣・大塚泰正・種市康太郎監訳):ワーク・エンゲージメント. 星和書店, 東京:pp2-3, 2014.

6) タワーズワトソンHP. Sustainable Employee Engagement. Available from: URL: https://www.towerswatson.com/ja-JP/Services/Services/employee-engagement-surves, 検索日2017年5月4日.

7) ジョン H. フレミング, カート W. コフマン, ジェームズ K. ハーター. 顧客と従業員のエンゲージメントを最適化する:ヒューマンシグマ 良質な顧客接点をつくる. ハーバードビジネスレビュー. 2005(12):88-99.

8) ロブ・マーキー. 情熱あふれる従業員が働きやすい会社とは. ハーバードビジネスレビュー. 2013(11):88-99.

9) W. チャン キム, レネ・モボルニュ. フェア・プロセス:協力と信頼の源泉. ハーバードビジネスレビュー. 2008(8):68-83.

10)Gallup Consulting. Q12 Meta-Analysis Report. 2016.Available from: URL: http://www.gallup.com/services/191489/q12-meta-analysis-report-2016.aspx, 検索日2017年5月5日.

 

 

 

 

 

表3:FWS4スコアの相関係数(対象者:849人)

 

 

 

 

 

 

表4:エンゲージメントスコア、同個別項目と

フィジカルスコアスコア個別項目との相関係数

 

 

表5:エンゲージメントスコア、同個別項目と
フィジカルスコアスコア構成質問選択肢の選択有無との関係